ガンマ関数の相補公式から \( \sin z \) の無限積表示が導かれる。逆に \( \sin z \) の無限積表示から相補公式を導くこともできる。相補公式と無限積表示の一方が証明されていれば理論は構成できるため1つの本に両方書かれることは通常ないので、本記事でまとめてみた。
関係する公式
本記事では次の3つの公式が関係する。Weierstrass の公式はガンマ関数を無限積で表す重要な役割を担う。
ガンマ関数の相補公式 \( \displaystyle \Gamma(z) \,\Gamma(1-z) = \frac{\pi}{\sin \pi z}\)
\( \sin \pi z \) の無限積表示 \( \displaystyle \sin \pi z = \pi z \prod_{n=1}^\infty \left( 1 \,-\, \frac{z^2}{n^2} \right) \)
Weierstrass の公式 \( \displaystyle \Gamma(z) = \frac{e^{-\gamma z}}{z} \prod_{n=1}^\infty \frac{e^{\frac{z}{n}}}{1+\frac{z}{n}} \)
相補公式から無限積表示
解析入門 I (杉浦) を参考にした。
\( \begin{eqnarray}
\sin \pi z
&=& \frac{\pi}{\Gamma(z) \,\Gamma(1-z)} \\
&=& \frac{\pi}{ -z \, \Gamma(z) \,\Gamma(-z)} \\
&=& – \frac{\pi}{ z } \cdot z e^{\gamma z} \prod_{n=1}^\infty e^{-\frac{z}{n}}\left(1+\frac{z}{n}\right) \cdot (-z) e^{- \gamma z}\prod_{n=1}^\infty e^{\frac{z}{n}}\left(1-\frac{z}{n}\right) \\
&=& \pi z \prod_{n=1}^\infty \left( 1 \,-\, \frac{z^2}{n^2} \right)
\end{eqnarray} \)
無限積表示から相補公式
複素関数入門(神保) を参考にした。
\( \begin{eqnarray}
\frac{1}{\Gamma(z) \,\Gamma(1-z)}
&=& \frac{1}{-z\,\Gamma(z) \,\Gamma(-z)} \\
&=& – \frac{1}{z} \cdot z e^{\gamma z} \prod_{n=1}^\infty e^{-\frac{z}{n}}\left( 1+\frac{z}{n}\right) \cdot (-z) e^{-\gamma z} \prod_{n=1}^\infty e^{\frac{z}{n}}\left( 1-\frac{z}{n} \right) \\
&=& z\prod_{n=1}^\infty \left( 1- \frac{z^2}{n^2}\right) \\
&=& \frac{\sin \pi z}{\pi}
\end{eqnarray} \)
まとめ
相補公式と無限積表示の間の変換はほぼ逆手順であって、Weierstrass の公式を通して繋がっている。