ガンマ関数 Legendreの倍数公式(ベータ関数による証明)

東北大学の黒木先生から twitter でベータ関数を使った簡明な証明をご紹介いただいた。この証明法はもっと多くのテキストで取り上げられても良いと思うが、手持ちのテキストでは見当たらなかった。ご提供いただいた資料には面白い関連事項もあるようなので、時間があるときに読んでおきたい。今回は倍数公式の別証明だけを取り上げる。

\( \displaystyle \int_{-1}^1 \left( 1-t^2 \right)^{x-1} \,dt \) に対して、ベータ関数を用いた2通りの表現を与えてガンマ関数を用いた式に書き換えることで倍数公式を導く。\( \displaystyle \left( 1-t^2 \right)^{x-1} = \left( 1-t \right)^{x-1} \left( 1+t \right)^{x-1} \) に注意して、\(t=2s-1\) と置き換えると次式が得られる。

\( \begin{eqnarray}
\int_{-1}^1 \left( 1-t^2 \right)^{x-1} \,dt
&=& \int_0^1 2^{x-1}(1-s)^{x-1} \cdot 2^{x-1}s^{x-1}\cdot 2ds \\[1mm]
&=& 2^{2x-1} \int_0^1 (1-s)^{x-1} \cdot 2^{x-1}s^{x-1}\,ds \\[1mm]
&=& 2^{2x-1} B(x,x) \\[3mm]
&=& \frac{2^{2x-1} \, \Gamma(x)^2}{\Gamma(2x)}
\end{eqnarray} \)

今度は \( t^2=u \) と置き換えると次式が得られる。

\( \begin{eqnarray}
\int_{-1}^1 \left( 1-t^2 \right)^{x-1} \,dt
&=& 2 \int_0^1 \left( 1-t^2 \right)^{x-1} \,dt \\[1mm]
&=& \int_0^1 (1-u)^{x-1} \frac{du}{\sqrt{u}} \\[1mm]
&=& B \left( \frac{1}{2},x \right) \\[3mm]
&=& \frac{\Gamma\left( \frac{1}{2} \right) \, \Gamma(x)}{\Gamma\left( x+\frac{1}{2} \right)} \\[3mm]
&=& \frac{\sqrt{\pi} \, \Gamma(x)}{\Gamma\left( x+\frac{1}{2} \right)}
\end{eqnarray} \)

2つの式を合わせると \( \displaystyle \frac{2^{2x-1} \, \Gamma(x)^2}{\Gamma(2x)} = \frac{\sqrt{\pi} \, \Gamma(x)}{\Gamma\left( x+\frac{1}{2} \right)} \) となる。これを整理して、倍数公式

\( \begin{eqnarray} \Gamma(2x) = \frac{2^{2x-1}}{\sqrt{\pi}}\,\Gamma(x)\,\Gamma\left( x+\frac{1}{2} \right)
\end{eqnarray} \)

が得られる。