リーマン球上の円

リーマン球上の円が複素平面上では円または直線であることについてまとめた。複素関数論講義(野村) 11.1章を参考にした。

リーマン球と複素平面

リーマン球 \( \hat{ \bf{C} }\) は3次元座標系で \( X^2+Y^2+Z^2=1 \) と定義される。\( \hat{ \bf{C} } \) の北極点を \( N(0,0,1) \) で表す。\(XY\) 平面を複素平面 \( \bf{C} \) と同一視して、複素数は小文字を使って \( z=x+yi \) と表す。\( \hat{ \bf{C} } \) 上の点 \(P\) と \(N\) を結ぶ直線と \(XY\) 平面の交点を複素数と対応させる。こうして \(\hat{ \bf{C} } \) から \(N\) を除いて複素数と1対1の対応がつく。\(N\) は無限遠点に対応させる。\( \hat{ \bf{C} } \) と \( \bf{C} \) を対応させる式を求める。\( \hat{ \bf{C} }\) 上の点 \( P(X,Y,Z) \) と \(N\) を結ぶ直線は \( (1-t)\left( \begin{array}{c} 0 \\ 0 \\ 1\end{array}\right) + t\left( \begin{array}{c} X \\ Y \\ Z\end{array}\right) \) と表される。\(Z\) 座標を 0 とすると、\( t=\frac{1}{1-Z} \) となるから、対応する複素数では \( x=tX=\frac{X}{1-Z},\, y=tY=\frac{Y}{1-Z} \) となる。したがって、\( \hat{ \bf{C} } \) から \( \bf{C} \) への対応は次のようになる。

\( \begin{eqnarray}
(X,Y,Z) & \longmapsto & \frac{1}{1-Z}(X+Yi)
\end{eqnarray} \)

今度は複素数 \( z=x+yi \) に \( \hat{ \bf{C} } \) 上の点を対応させよう。3次元座標系で複素数 \( z \) と \( N \) を通る直線は \( (1-t)\left( \begin{array}{c} 0 \\ 0 \\ 1\end{array}\right) + t\left( \begin{array}{c} x \\ y \\ 0\end{array}\right) \) と表される。\( \hat{ \bf{C} } \) との交点では \( (tx)^2 + (ty)^2 + (1-t)^2 = 1 \) となるから、\( t = 0, \, \frac{2}{|z|^2+1} \) である。\( t=0 \) は \(N\) に対応するから、\( t = \frac{2}{|z|^2+1} \) である。このとき、\( X = tx = \frac{2x}{|z|^2+1} \), \( Y = ty = \frac{2y}{|z|^2+1} \), \( Z = 1 \,-\, t = \frac{|z|^2-1}{|z|^2+1} \) となる。以上により、\( \bf{C} \) から \( \hat{ \bf{C} } \) への対応は次のようになる。

\( \begin{eqnarray}
z=x+yi & \longmapsto & \left( \frac{2x}{|z|^2+1}, \frac{2y}{|z|^2+1}, \frac{|z|^2-1}{|z|^2+1} \right)
\end{eqnarray} \)

微積分で三角関数の有理関数の積分を求める時の変数変換に現れる式に似ている気がする。円絡みの計算だから不思議でもないか。

リーマン球と直線

\( \hat{ \bf{C} }\) をある平面で切断すると断面は円になる。逆に \( \hat{ \bf{C} } \) に含まれる円はある平面上にある。\( \hat{ \bf{C} } \) 上の円 \(C\) が \(N\) を通るとき \(C\) を含む平面と \(XY\) 平面は直線で交わるので、\(N\) を通る円は複素平面で直線になる。逆に、\(XY\) 平面上の直線と \(N\) を含む平面は唯一存在する。この平面と\( \hat{ \bf{C} }\) が交わる部分は \(N\) を含む円である。こうして、\(N\) を通る \( \hat{ \bf{C} }\) 上の円と \(\bf{C} \) 上の直線が対応することが分かる。

リーマン球と円

\( \hat{ \bf{C} }\) 上の \(N\) を通らない円と \( \bf{C} \) 上の円が対応することを示す。\( \bf{C} \) 上の円は \( |\beta|^2 > c \) を満たす実数 \(c\) と複素数 \( \beta \) を使って \( |z|^2+\overline{\beta}\,z+\beta\,\overline{z}+c = 0 \) と表される。この円を \(C\)、対応する\( \hat{ \bf{C} } \) 上の曲線を \( \hat{C} \) とする。\( \hat{C} \) が円になることを示す。\( \hat{C} \) が閉曲線であることから、ある平面上にあることを示せば、\( \hat{ \bf{C} }\) 上の円であることが分かる。

\( \begin{eqnarray}
X &=& \frac{2x}{|z|^2+1} \tag{1} \\[3mm]
Y &=& \frac{2y}{|z|^2+1} \tag{2} \\[3mm]
Z &=& \frac{|z|^2\,-\,1}{|z|^2+1} \tag{3}
\end{eqnarray} \)

を使って、\( |z|^2 + \overline{\beta} \,z + \beta\,\overline{z} + c = 0 \) を \( X,Y,Z \) の式に変換する。\( \beta=b_1+b_2 i \) とすると、円の方程式は \( |z|^2 + 2 b_1 x + 2 b_2 y + c = 0 \) となる。(1) – (3) より \( |z|^2 = \frac{1+Z}{1-Z},\) \( x = \frac{X}{1-Z}, \) \( y = \frac{Y}{1-Z} \) が得られ、これらを円の方程式に代入する。

\( \begin{eqnarray}
2 b_1 X+2 b_2 Y+(1 \,-\, c)Z + 1 + c &=& 0
\end{eqnarray} \)

これは平面の式だから、\( \bf{C} \) 上の円が \( \hat{ \bf{C} } \) 上の円に対応することが分かった。\( (0,0,1) \) を左辺に代入すると 2 になることから、\(N\) を通らないことも分かる。

\( \hat{ \bf{C} } \) 上の \(N\) を通らない円を \( \hat{ \bf{C} } \) の平面 \( H: pX+qY+rZ+s=0 \) による断面とする。\( \hat{ \bf{C} } \) と平面 \(H\) が交わるためには原点から \(H\) の距離が1より小さい必要があるので、\( \frac{|s|}{\sqrt{p^2+q^2+r^2}} < 1 \)。したがって、\( s^2 \,-\, r^2 < p^2+q^2 \) である。(1) – (3) を \(H\) の方程式に代入すると、次式を得る。

\(\begin{eqnarray}
(r+s)|z|^2+2px+2qy+s-r &=& 0
\end{eqnarray}\)

もし \( r+s=0 \) ならば \(H\) が \( N(0,0,1) \) を通ることになり仮定に反するので、\( r+s \neq 0 \)。

\(\begin{eqnarray}
|z|^2+\frac{2px+2qy}{r+s}+\frac{s-r}{r+s} &=& 0
\end{eqnarray}\)

\( \beta=\frac{p}{r+s}+\frac{q}{r+s}\,i\) とおくと、\( |z|^2 + \overline{\beta}\,z + \beta \, \overline{z} + \frac{s-r}{r+s} = 0 \) となり、\( c=\frac{s-r}{r+s} \) とおけば、\( \bf{C} \) 上の円の方程式の形となり、後は \( |\beta|^2 > c \) を示せば良い。

\( \begin{eqnarray}
|\beta|^2 &=& \frac{p^2+q^2}{(r+s)^2} \,>\, \frac{s^2 \,-\, r^2}{(r+s)^2} = \frac{s-r}{r+s}
\end{eqnarray} \)

以上により、\( \hat{ \bf{C} } \) 上の \(N\) を通らない円は \( \bf{C} \) 上の円である。

まとめ

\( \hat{ \bf{C} }\) 上の円と \( \bf{C} \) 上の直線および円の対応をまとめておく。

\( \hat{ \bf{C} }\) \( \bf{C} \)
\(N\) を通る円直線
\(N\) を通らない円