前回は学内のイベントで医学部の脳外科医と接する機会(医学部の脳外科医)があったことを書いた。今回は私が医学部の教員に診察を受けた話である。
一過性黒内障という視野の半分が突然欠損するという病気に悩まされていた。当然ながら初めて症状がでたときは驚いた。大病院の眼科で診察を受けたが眼科的な原因ではなく全身的な原因だとだけで詳しい説明は得られなかった。症状が再発したのは1年後、今度は別の眼下で診察を受け、一過性黒内障と診断された。黒内障とは言うものの欠損部は白かった。病名は視野の色とは関係ないようだ。頸動脈から分岐した血管が目に流れている。血栓が詰まって網膜に血液が行き渡らないことにより機能が停止する。血管は上下に分かれていて、例えば上の血管が詰まると視野の下部が欠損する。網膜には上下反転した画像が投影されていることから、詰まった血管とは逆の視野に異常が出る。30分から1時間程度続くと視野が戻らなくなるので、それまでに血栓が流れてしまえば速やかに回復する。初めて症状が出た時は1分程度、その後は年1回ほどの頻度で発症し、長い時で3分程度続いた。これくらいで済めば視野欠損が残ることはないが、実際に症状が現れた時は恐怖である。眼科的に施す治療はないということで、循環器内科を紹介された。その後、自主的に神経内科や脳神経外科も受診した。今回は、神経内科を受診した話である。
受診した神経内科の医師は本学の准教授だった。他の病院でも名前を見かけたので、週2回は学外で働いている。本学ではどれくらい働いているのだろうか。脳波では説明がつかないようで、少し考えていた。
医師 「片頭痛が出ることはあるかい。」
私 「時々あります。」
医師 「じゃあ、片頭痛の予兆だ。その後に片頭痛が起こっただろう。これで全て説明がつく。」
私 「起こっていません。片頭痛の時には違う予兆が出ています。」
私の片頭痛の予兆は常に「閃輝暗点」であって、視野欠損の後に片頭痛が生じたことはない。
医師 「予兆が変わることもある。これですべて解決した。お大事に。」
と怒り出して、診療を打ち切ってしまった。分からないと言うことはプライドが許さず、解決したことにしたかったのだろう。同じ病院でも他の医師は分からない時は分からないと言ってくれた。大学教員だからだろうか。思うようにことが進まないと怒り出すのは、医学部に限らず工学部の教員にもしばしば見られた。医師の場合は重大な結果になりかねないので、プライドよりも患者のことを優先してもらいたいものだ。