2000年代半ばのことである。新設科目であるデータベース演習の担当を突然割り当てられた。データベースの知識は全く無いにもかかわらず私が指名されたのは、上司の響教授がデータベースの講義担当だからだ。データベースに関する知識がある教員は少ないと思われ、データベースで博士号を取得した響教授は適任だった。しかし、研究室ではデータベースの研究をしておらず、私もデータベースに触れる機会はなかった。それまでのデータベースは4年生の選択科目という、オプション的な位置づけだった。それが3年前期の選択必修科目に格上げになった。適切な位置づけになったと言えよう。これまで軽視されていたために、私も担当することは想定しておらず、全く勉強していなかった。止む無く勉強を始め、後にスペシャリストの資格に合格するほどになった。
響教授からは 「SQL だけやっておけば良い」とだけ言われた。私はデータベースに関して無知である。教材を作成していく過程で相談したが、「まかせた」としか返ってこない。私に担当を支持した教務主任に「響教授が協力してくれません」と協力を働き掛けるようお願いしたが、「響さんはすぐサボるから、まあ頑張って」と対処してもらえなかった。特にやっかいだったのはソフトウェアの選定である。響教授は何のアドバイスもくれないので学生と相談して「SQLite が簡単ですよ」と教えてもらった。私の構想とはしっくりこなかったが、とりあえず候補が得られた。色々探した結果、「PC UNIXユーザのためのPostgreSQL完全攻略ガイド」という素晴らしい本を見つけ、PostgreSQL を使うことに決めた。テキストと日本PostgreSQLユーザ会が提供する日本語マニュアルを参考にして納得のいく教材が完成した。確認はしないと思うが一応、責任者である響教授に報告した。ソフトウェアには PostgreSQL を採用したことを伝えると、「だめだ。MySQLにしろ。MySQLが一番使われているんだ。」とやり直しを命じられた。あまりにも酷い。事前にソフトウェアについても相談しているのに「まかせた」としか言わなかった。決まったソフトウェアがあるなら、どうして事前に言わなかったのだ。全て作り終わってからとは悪質だ。さて、どうするか。とりあえず MySQL について調べてはみた。PostgreSQL の参考資料が素晴らしかったこともあり、それ以上の教材が作成できるとは思わなかった。MySQL について調べたけど、能力不足で出来なかったことにした。叱られることは覚悟の上だ。能力的に出来ないものはどうしようもないはずだ。